会場の条件は、規程が数値で決めている
体育館ごとの違いを戦術として扱う前に、そもそも何が決まっているのかを押さえておきます。日本バドミントン協会の大会運営規程の第3章「競技会場」は、コートの周りの条件を数値で定めています(BAJルールブック2026)。屋内で競技中は風を遮断すること(第10条)、天井の高さはコート面より12m以上(第11条)、コートの外側四周と隣接するコートとの間隔はそれぞれ2m以上(第12条)、照度は各コートのネット中央上縁において1000ルクス以上(第13条)です。条文の詳細は競技会場の条件にまとめてあります。
戦術として重要なのは、この数値が満たせない会場でも大会は開かれるという点です。規程は自分で例外の扱いを用意しています。
| 条件 | 規程の数値 | 満たせないときの扱い |
|---|---|---|
| 天井の高さ | コート面より12m以上(第11条) | 解説1「使用する体育館の天井の高さが12m未満であった場合は、会場ルールを定めて大会を運営する」 |
| 隣接コートとの間隔 | 2m以上(第12条) | 解説2「確保できない場合は、プレーに支障なく行われるように運営する」 |
| 照度 | ネット中央上縁で1000ルクス以上(第13条) | 解説3「1000ルクス未満であった場合は、会場ルールを定めて運営する」 |
つまり、条件が違えばルールのほうが会場に合わせて足される。 会場に着いてまず確かめるべきものは、天井や照明そのものよりも、その日の会場ルールが何を定めているか、ということになります。天井にシャトルが当たったときの扱いなどは大会ごとの取り決めになるためです。会場ごとの違いを扱った読み物は体育館の照明とシャトルの見えにくさにあります。
風について、規程が言っていること
風は「読むもの」ではなく、まず「無いことになっているもの」です。第10条は「大会に使用する会場は、屋内で競技中は風を遮断しなければならない」と定めています。そのうえで空調については第16条が別に条件を付けています。
空気調節装置(エアーコンディショナー)使用により生じる気流は、極力避けるものとするが、競技会場(観覧席を含む)温度環境維持のため、止むを得ないと判断した場合は外気を遮断していることを条件として使用を認める。なお、この判断はその大会のレフェリーによってなされる。
気流は極力避ける。使うかどうかを決めるのはレフェリー。 選手側に選択肢がある事柄ではありません。流れているように感じる会場についての読み物は体育館の空調とシャトルの流れにまとめてあります。
試合前に選べるのは、トスの1回だけ
条件が左右で違うと感じたとき、それを反映できる公式の機会は競技規則第6条のトスです(BAJルールブック2026)。
プレーが始まる前にトスが行われ、トスに勝ったサイドが次の〔1〕か〔2〕のいずれかを選ぶ。〔1〕最初にサービスをするか、レシーブをするか〔2〕マッチ開始のとき、そのコートのどちらのエンドを選ぶか
サーブかレシーブか、エンドか。どちらか一方しか選べません。 条文には解説が付いていて、トスに勝ったサイドが「レシーブ」を選んだ場合、負けたサイドは自動的にサーブすることになり、エンドも負けたサイドが選ぶことになる、とされています。日本では「トス」がじゃんけんで行われることが多く、国際大会では通常コインで行われる、という説明も添えられています。
エンドを取るということは、最初のサービス権を相手に渡すということです。会場の条件がエンドで違うと判断したなら、その差が最初の1本のサービス権より大きいかどうかを比べることになります。
エンドが替わるタイミングは決まっている
エンドを選んだ後、次に替わる場面は競技規則第8条第1項が定めています。
- 第1ゲームを終了したとき
- 第2ゲームを終了したとき(第3ゲームを行う場合)
- 第3ゲームで、どちらかのサイドが最初に11点に達したとき
3ゲームの試合では、片方のエンドで戦う時間は均等になりません。第3ゲームは11点で入れ替わるので、同じエンドで21点を戦い切るのは第1ゲームと第2ゲームだけです。第2項は、規定どおりに替えなかった場合は間違いが発見され次第、シャトルがインプレーでなくなったときに速やかに交替し、スコアはそのままとすると定めています。区切りの規定はインターバル・コートチェンジ・タイムのルールにまとめてあります。
会場の条件は、シャトルの選び方に反映される
条件差がいちばん明確に制度へ反映されるのは、シャトルです。競技規則第3条は試打の方法を定めています。
シャトルを試打するには、プレーヤーはバックバウンダリーライン上に打点が来るようにして、全力のアンダーハンドストロークで打つ。シャトルは上向きの角度で、しかもサイドラインと平行になる方向で打ち上げられるものとする。
そして第2項が「正しいスピードのシャトルとは、図Bのとおりバックバウンダリーラインの手前530mmから990mmまでの範囲内に落ちたものをいう」と定めます。正しいスピードは1点ではなく幅で決められていて、この範囲に収まる限りどれも正しいスピードです。
さらに第2条第4項は、条件そのものへの対応を認めています。
一般的な形状やスピードやフライトに特に変わりがなければ、高度または気候のために大気の状態が規定のシャトルでは不適切である場合に限り、(公財)日本バドミントン協会の承認のもとに上記の細則を変更してもよい。
高度や気候によってシャトルの細則を変えられるという条文です。会場の条件がシャトルの飛び方を変えることを、規則そのものが前提にしています。シャトルの番号と飛び方の関係はシャトルのスピード番号、交換の扱いはシャトルの試打と交換のルールにまとめてあります。
試打も交換も、主審の管理下にある
ただし、その日のシャトルをどうするかは自分たちだけで決められません。審判用語には試打に関するコールが並んでいます。3.3.9「シャトルを試打してください」、3.3.10「シャトルを試打しないでください」、そして3.3.11「シャトルのスピードに影響を与えてはいけません」。
試打をしてよいかどうかも、主審のコールで決まるということです。加えて競技規則第16条第6項〔2〕は「シャトルのスピードや飛び方を変えるために、故意にシャトルに手を加えたり破損したりすること」を禁じており、解説はインプレーでないときに羽根をラケットのグリップやひじで押し広げたり押しつぶしたりすること、シャトルに息を吹きかけることを具体例として挙げています。違反への処置は警告、再違反でフォルト、目に余る場合はフォルトという段階です(同条第7項〔1〕)。条件に合わせるという名目でシャトルに触ることは、はっきり禁止されています。
奥行きは、コートの外にある
「奥行きを読む」という言い方には2つの意味があります。1つはコートの中の前後で、これはコートの寸法として決まっています(コート・ネットの公式規格)。もう1つはコートの外に取られた空間で、こちらが会場ごとに変わる部分です。大会運営規程第12条はコートの外側四周にそれぞれ2m以上、2面以上を設ける場合も隣接コートとの間隔を2m以上と定めていますが、解説2は確保できない場合の運営を認めています。
照明については第14条が位置まで定めています。コートの真上は遮光されていなければならず、いかなる発光体もあってはならない。さらに、片方のバックバウンダリーライン上のいかなる位置から反対側のバックバウンダリーライン上のいかなる位置を見通しても、その延長線上はすべて遮光されていなければならない、という条文です。奥を見通す線の上に光を置かないという決め方になっていて、後方から後方へ打ち合う競技の性質がそのまま条文になっています。
普段使う体育館の設備は施設ごとに違います。当サイトの体育館・コートを探すから施設ごとの情報を確認できます。
この記事で扱わなかったこと
「風下ではロブを短めにする」「照明が眩しいエンドではハイクリアーを減らす」といった条件別の打ち分け、天井が低い会場でのロブの高さの目安、会場ごとの床の跳ね方への対応は、当サイトが出典として使える一次資料に記述が見つかりませんでした。規程が定めているのは会場が満たすべき条件と、満たせないときに会場ルールを定めるという手続きまでで、条件に応じた打ち方を示した公式資料は確認できていません。体感で埋めることはしないので扱いません。