レシーブ側の2人のうち、規則が縛るのは1人だけ
サーブを受ける瞬間、レシーブ側の2人の立場は対等ではありません。競技規則第11条第1項〔4〕は「サーバーと斜めに向き合っているレシービングサイドのプレーヤーがレシーバーである」と定め、第9条第1項〔3〕はサーバーとレシーバーが「斜めに向かい合ったサービスコート内に、サービスコートの境界線に触れずに立つ」ことを求めます。両足の一部はサービスがなされるまでコート面に接していなければなりません(第9条第1項〔4〕)。
一方、レシーバーのパートナーには位置の指定がありません。第9条第5項が「ダブルスでは、サービスが始まり終了するまで、それぞれのパートナーは、相手側のサーバーまたはレシーバーの視界をさえぎらない限り、それぞれのコート内ならどこの位置にいてもよい」と定めているためです(BAJルールブック2026)。
| 立場 | 規則が決めていること | 決めていないこと |
|---|---|---|
| レシーバー | サーバーと斜めに向かい合うサービスコートの中/境界線に触れない/両足の一部を接地 | サービスコートの中のどこに立つか |
| レシーバーのパートナー | 相手のサーバーまたはレシーバーの視界をさえぎらない | コート内のどこに立つか |
| サービス権が移った直後 | 新しくレシービングサイドになるプレーヤーは、直前にサーブした同じサービスコートに留まる | — |
3行目は第11条第1項〔3〕です。サービス権を奪われた側は、左右を入れ替えずにその場でレシーブに回ります。 ラリー中にどれだけ動いていても、次にレシーブする側の並びは前のラリーの位置で決まる、ということです。この規則の全体像はダブルスのルールとサーブ順・ポジションにあります。サーブを打つ側から見た同じ場面はダブルスのサーブとレシーブの陣形にまとめてあります。
「上げる」から始まる決まった流れ
世界バドミントン連盟(BWF)の学校向け公式教材Shuttle Timeは、レッスン22にラリーの順序を固定した練習を置いています。ここにレシーブ側から見た標準形がそのまま書かれています(BWF Shuttle Time Lesson Plans)。
Rally starts with backhand low service. The return is a lift, server takes net position, partner smashes, opponents adopt defensive position and use block defence. Net player lifts and formations change (lift-smash-block).
低いサービスに対してレシーブ側が上げると、サーブ側はネット際と後方に分かれて打ち下ろしてきます。上げた瞬間に、自分たちは左右に並ぶ守りの位置に移ることになります。返し方はブロックです。左右に並ぶ守りの構えそのものはダブルスの守り方で扱っています。
そして、この引用文には続きがあります。「Net player lifts and formations change」。ネット前のプレーヤーが上げると、そこで陣形が入れ替わる。 攻めていた側が守りに回り、守っていた側が攻めに回る、その切り替えの起点が「上げること」だと書かれているわけです。教本の対応表も、この練習を「守りと攻めの陣形」の項目に置き、シャトルを使わない段階から始めて「lift-smash-block」のような決まった順序のストロークを使うラリーへ進むよう指示しています(BWF Shuttle Time Teachers' Manual)。入れ替わりの動き方はダブルスのローテーションにあります。
上げない道もある
レシーブが必ず上げる球になるわけではありません。教本は同じレッスン群の中に、上げずに前へ出る形も置いています。レッスン21のミッドコートとフロントコートの練習です。
Work in pairs on half court, both players start from midcourt. They play flat midcourt to midcourt and if there is an opportunity, one of them tries to move forward towards the net and takes the attack. The other player then retreats into a defensive position.
平らな球でミッドコートの打ち合いを続け、機会があればどちらかが前に出て攻撃を取る。もう1人はそこで守りの位置に下がる。 上げるか、平らに返して前に出る機会をうかがうか。レシーブ側の分岐はここにあります。
この練習の指導ポイントも具体的です。前に出るときは「ラケットを上げたまま、動きは小さく」、守るときは「膝を曲げて重心を下げ、ひじを体の前に置く」「主にバックハンドの守りを促す」と書かれています。ミッドコートの打ち合いはドライブの打ち方とドライブレシーブ、打ち下ろされた球の受け方はスマッシュレシーブにまとめてあります。
ミッドコートを取れるかどうかが分かれ目
なぜ「上げるか、平らに返すか」がこれほど重要なのか。教本のレッスン対応表は、ダブルスの要素の1つ「Winning the Midcourt in Doubles」の欄にこう注記しています。
"Winning the midcourt" is very important in doubles tactics and the main difference to singles tactical play.
ミッドコートを制することがダブルス戦術の要で、シングルスとの主な違いである。 そして「これには良いラケットさばきとラケットのスピードが要る」と続けます。上げてしまえばミッドコートは相手のものになり、平らに返せばミッドコートの取り合いが続く。レシーブの1球はその分かれ道を選ぶ球だ、という位置づけです。
立ち位置は「ありうる返球」から決まる
では、サービスコートの中のどこに立つのか。規則が決めていない部分について、教本は基本位置(base position)の定義を与えています。
The base position can be defined as the court position from which you are best able to deal with your opponent's probable replies.
相手のありうる返球に最もよく対応できるコート上の位置であり、「固定された点ではなく流動的な位置」だとされています。低いサービスに対してありうるのは、ネットを越えてすぐ落ちる球と、フリックで奥へ飛ぶ球です。どちらにも届く位置が、そのときのレシーバーの立つべき場所になります。サーブの側がその2つをどう混ぜるかはサーブの組み立てで扱いました。レシーブの構えと動き出しの練習はサーブレシーブの基本にあります。
この記事で扱わなかったこと
レシーバーが構える高さやラケットの位置、サービスコートの中で前寄りに立つか後ろ寄りに立つかの基準、「短いサーブには前に踏み込んでネット前に落とす」といった返球の選び方の定石、レシーバーのパートナーが立つべき具体的な位置は、当サイトが出典として使える一次資料に記述が見つかりませんでした。基本位置の定義から自分で導く部分として残し、数値や手順としては書きません。