サービスコートの形が、種目によって違う
サーブの組み立てを種目別に考える理由は、狙う枠の形そのものが違うからです。競技規則第1条の図Aは、1つのコートに2種類の境界を引いています(BAJルールブック2026)。
| 項目 | シングルス | ダブルス |
|---|---|---|
| コートの幅 | 5.180m | 6.100m |
| サービスコートの奥の境界 | バックバウンダリーライン兼ロングサービスライン(シングルス) | ロングサービスライン(ダブルス) |
| 奥の境界の位置関係 | コートのいちばん奥 | バックバウンダリーラインの720mm手前 |
シングルスのサービスコートは細くて長く、ダブルスのサービスコートは太くて短い。 サーブが入る範囲が違うので、「入れば有効」と「入るだけでは不利」の境目も種目ごとに変わります。この形の違いはコートの寸法の記事コート・ネットの公式規格と用語辞典のシングルスとダブルスの違い(コートとルール)にも整理してあります。
なお、シングルスとダブルスでサービスコートの左右の決まり方は同じではありません。シングルスは第10条第1項でサーバーのスコアが0か偶数のとき右、奇数のとき左。ダブルスは第11条第1項でサービングサイドのスコアが0か偶数のとき右、奇数のとき左です。基準がサーバー個人のスコアかサイドのスコアかという違いがあり、どちらのサービスコートから打つかは自分で選べません。規則そのものはサービスのルールとダブルスのルールとサーブ順・ポジションにあります。
規則が縛っている4つのこと
サーブは、ラリー中のどのショットよりも規則の縛りが強い1球です。組み立てを考える前に、動かせない条件を確認しておきます。すべて競技規則第9条です。
- シャトル全体がコート面から1.15m以下でラケットに打たれること(第1項〔6〕)
- サーバーとレシーバーの両足の一部がコート面に接していること(第1項〔4〕)
- サーバーのラケットは、サービスが始まってからなされるまで前方への動きを継続すること(第1項〔7〕)
- 態勢が整った後は不当に遅らせないこと(第1項〔1〕)
4点目には解説が付いていて、サーバーが立って何もしない、あるいはラケットを左右に何度も動かしている場合は主審が過度の遅延と判断してフォルトをコールできる、レシーバーが準備ができていないことを示すために手を挙げている場合も同様だ、とあります。「相手が構えてから間を取って揺さぶる」という組み立ては規則が認めていません。 高さの判定の実務はサービスの高さの判定、打ち方の側はサービスの高さの規則とフォームにまとめてあります。
長い球と短い球の役割分担
世界バドミントン連盟(BWF)の学校向け公式教材Shuttle Timeは、長短の使い分けを1文で書いています。レッスン9のハイサービスを扱う欄の指導ポイントです(BWF Shuttle Time Lesson Plans)。
Use forehand high serve for long shots and backhand short serve for short shots.
長い球はフォアハンドのハイサービス、短い球はバックハンドのショートサービス。 同じレッスンは、ハイサービスの狙いを「高く垂直に落ちるシャトルを作ること」とし、練習では「まず高さに集中し、次に長さを伸ばしていく」順序を示しています。高さが先で距離が後、という順です。それぞれの打ち方はロングサービスの打ち方とショートサービスの打ち方にあります。
ダブルスでは、サービスが3本柱の1本目
教本のレッスン対応表は、ダブルスの戦術を「serving(サービス)」「winning the midcourt(ミッドコートを制すること)」「positional play(陣形)」の3つに分け、最後にこの3つを合わせて試合にする、という構成を取っています(BWF Shuttle Time Teachers' Manual)。ダブルスの立ち上がりを扱う欄の指導上の注意は、ただ一言「Emphasise the importance of serving in doubles.(ダブルスではサービスの重要性を強調すること)」です。
その理由は、サービスコートの形からも説明がつきます。ダブルスの奥の境界はバックバウンダリーラインの720mm手前にあるので、長いサーブで奥まで運んでも、シングルスほど相手を後ろに追えません。そのうえサーブの後は相手の返球を2人で受けることになります。ダブルスのサーブから3球目までの標準的な流れはダブルスのサーブとレシーブの陣形、受ける側の設計はダブルスのレシーブからの組み立てにあります。
速い展開では、サーブの種類を絞るという設計もある
教本のレッスン22には、ミッドコートだけでラリーをする練習が置かれています。前後を「アウト」にして中央だけを使う設定で、その進め方に指導上の注意が2つ付いています。1つは「Start with low or flick backhand serve and encourage flat play.(低いサービスかフリックのバックハンドサービスから始め、平らな展開を促す)」、もう1つは「Use only short or flick serves to reduce uncertainty.(不確実さを減らすため、短いサービスかフリックのサービスだけを使う)」です。
速く平らな展開を作りたい場面では、サーブの選択肢をあえて2つに絞るという設計が公式教材の側に書かれている、ということです。ここで挙がっているフリックの打ち方はフリックサービスの打ち方にあります。
自分が選べるのは「どこへ」だけ
ここまでを整理すると、サーブで自分が決められることはそれほど多くありません。
- 左右のサービスコートはスコアが決める(第10条第1項・第11条第1項)
- 高さの上限は1.15m(第9条第1項〔6〕)
- 足は接地したまま(第9条第1項〔4〕)
- ラケットは前へ振り続ける(第9条第1項〔7〕)
- 間を取れない(第9条第1項〔1〕)
残るのは、決められたサービスコートの中で長短と左右のどこを狙うか、そしてどの種類のサーブを混ぜるかです。狙う場所の考え方はサービスの狙いどころ、練習の組み方はサービスの練習メニューにまとめてあります。
この記事で扱わなかったこと
「この配分でロングとショートを混ぜる」といった割合、レベル別や相手の利き手別のサーブの選び方、ドライブサービスの位置づけ、シングルスでハイサービスとショートサービスをどう使い分けるかの基準は、当サイトが出典として使える一次資料に記述が見つかりませんでした。通説で埋めることはしないので扱いません。