先に、この記事で扱う決まりを表にまとめます。
| 場面 | 決まっていること | 根拠 |
|---|---|---|
| 打つ間隔 | 互いに当たらない間隔をペアの間に取る。左利きの空間も | BWF Shuttle Time |
| コート間 | 隣接するコートとの間隔は2m以上(大会会場) | 大会運営規程第12条 |
| 床 | 落ちたシャトルを放置しない。汗を投げない | Shuttle Time・審判用語 |
| 支柱とネット | 安定と脚部を、張った人以外も点検する | Shuttle Time・区体育館の案内 |
| 入場と種目の制限 | 無料開放でラケット不可、未就学児は入場禁止の例 | 見附市・高槻市の案内 |
| 目のけが | 眼の外傷が多い競技。保護眼鏡が予防 | 日本スポーツ振興センター |
安全のマナーは「距離」と「床」に集約される
バドミントンで人が傷つく場面は、ラケットが当たる、シャトルが目に入る、床で滑る・つまずくの3つにほぼ集約されます。世界バドミントン連盟が指導者向けに配布している教本Shuttle TimeのModule 3は、安全の項目として次を挙げています。原文は英語ですが、内容は体育館でそのまま使えます。
- 練習中・ゲーム中に床に落ちているシャトルに注意する(Take care of shuttles lying on the floor when pupils are practising / playing.)
- スイングや打球の練習で互いに当たらないだけの間隔をペアの間に確保する(Ensure there is enough space between the pairs so they do not hit each other when practising swings and hitting.)
- 右利きと左利きが一緒に練習するときは、そのぶんの空間を用意する(Ensure space is available when you have both right- and left-handed players practising together.)
- 球出しをする人の位置を安全にする。打つ範囲の周りに、球出し役と受け手のための十分な空間を取る
- 支柱が安定していること・脚部がつまずく形になっていないことを確認する(Ensure net posts are stable and the base is not dangerous, to avoid pupils tripping over them.)
「危ないから気をつける」ではなく、距離を取る・落ちたシャトルを放置しない・支柱の足元を確認するという具体的な行動になっているのが特徴です。
コートとコートの間は2メートル以上(大会会場の規程)
日本バドミントン協会の大会運営規程第12条は、競技区域について「コートの外側四周にそれぞれ2m以上の余裕がなければならない。2面以上のコートを設ける場合でも、隣接するコートとの間隔は2m以上とする」と定めています。同じ第3章には、天井の高さはコート面より12m以上(第11条)、照度はネット中央上縁で1000ルクス以上(第13条)、コートの真上は遮光されていなければならない(第14条)という規定も並びます。会場の条件そのものは競技会場の条件、照明の話は体育館の照明でシャトルが見えにくくなるのはなぜかにまとめました。
この2mは大会会場に求められる基準で、体育館の個人開放に適用される決まりではありません。ただし「2m取れば当たらない」という数字が競技団体の側にあることは知っておく価値があります。隣のコートとの間が明らかに狭いときは、エンドラインぎわの落下球を追わない、バックバウンダリーライン際で大きく下がらない、といった判断の基準になります。
落ちたシャトルと濡れた床
床の上の異物と水分は、そのまま転倒につながります。競技規則の審判用語には、モップ掛けに関するコールとして「汗を投げてはいけません」「故意に倒れてはいけません」が用意されています。汗を払う動作そのものが、主審の注意の対象として想定されているということです。飲食と水分補給の扱いは体育館の飲食・撮影・片付けのマナーにまとめました。
落ちたシャトルは、Shuttle Timeが安全の第1項目に挙げているとおり、拾うか端に寄せるまでが1つの動作です。ラリーが切れたらまず足元を見る、という順番を習慣にすると、隣のコートから飛び込んできた球にも同じ反応ができます。
支柱とネットは、張った人以外も点検する
体育館によっては、支柱とネットの設営が利用者の仕事です。厚別区体育館など札幌市の区体育館の一般開放は「支柱やネット等の運動用具の取付けと後片付けはご利用される皆様で行うようご協力ください」と案内しています。日野市市民の森ふれあいホールも、支柱・ネット・その他使用備品は利用者が準備・片付けを行うとしています。三鷹市井口コミュニティ・センターは、バレーやバドミントンのネットとポール、卓球台は利用後に必ず片付けて元の位置に戻すと明記しています。
自分が張っていないコートでも、支柱の足元と、ネットの高さを一度は見る。Shuttle Timeが「支柱が安定していること・脚部が危険でないこと」を安全項目に置いているのは、まさにこの点検を誰かがやる前提だからです。用具の扱い全般は用具のマナーを参照してください。
ラケット競技そのものを断っている開放がある
同じフロアで複数の種目が動く無料開放では、ラケットの使用自体を認めていない体育館があります。見附市総合体育館の指定管理者公式の「使用上の注意事項/一般開放(無料開放)の場合」は、バスケットボール・(ソフト)バレーボール・ドッジボール等の無料貸出があると案内したうえで、「ラケットなどの利用は一般開放時は危険のためご遠慮ください」と明記しています。
入場そのものに条件をつけている体育館もあります。高槻市立総合体育館は、個人利用での入場は小学生以上が対象で、未就学児は他の利用者の運動時に危険を伴うため入場禁止としています。子どもと一緒に行くときの決まりは子どもと体育館に行くときのマナーにまとめました。
目のけがは、この競技に固有のリスク
独立行政法人日本スポーツ振興センターの「スポーツ事故防止ハンドブック(解説編)」は、眼の外傷について「競技種目では野球、サッカー、バドミントン、ソフトボール、テニス等の球技で多く」と、バドミントンを名指しで挙げています。予防としては「スポーツ用保護眼鏡やフェイスマスクを使用する」ことが示されています。当たる場面と保護眼鏡の選び方はバドミントンで目を守るに詳しくまとめました。
同じハンドブックは、一般的な事故防止として「施設・設備・用具等について継続的・計画的に安全点検を行い、正しく使用する」「運動時には、準備運動・整理運動を十分に行う」ことを挙げています。打つ前の準備運動はウォーミングアップとクールダウンにまとめています。
明文が無いこと
「後ろの人に声をかけてから下がる」「隣のコートに入った球は取りに行かず声で知らせる」といった、個人開放でよく共有される作法については、競技団体の規程にも公的機関の資料にも体育館の利用案内にも明文が見つかりませんでした。この記事では扱っていません。根拠があるのは、ペアの間隔を確保すること・落ちたシャトルに注意すること・支柱の足元を確認すること・保護眼鏡を使うことまでです。
場面ごとのマナーはバドミントンのマナー 総まとめから引けます。